Michael

michael

ファンになってから7年程、私はマイコーの新作を待ち続けていた。
楽曲発表が長い間滞っている状況を受けて、世間の人は、マイコーはもはや歌えないし踊れない、スキャンダルだけで話題になるただの変人と言っていた。
彼本人は、「いつでも曲作りをしている」といつも言っている。自分の納得いくアルバムができない、作っている途中で邪魔が入るから、公に作品を出さないだけだと私も思っていた。
彼が納得出来るまで練りたいのなら、どれだけ時間がかかっても良いし、いくらでも待てると思った。
ただ、世間の彼に対する失礼な評価を聞いていると凄くもどかしくて、マイコー早く最高の作品出してあいつらの口ふさいじゃいなよ~と、焦る気持ちもあった。 そしてやっと活動再開の兆しが見え、ツアーの開催が目前に迫ったある日、ずっと望んでいた新アルバムリリースは叶わぬものになってしまった。
それから1年半頃、突然このアルバムのリリースが発表され、公式サイトでは曲までアップされる。
ずっと待っていてそれでも手に入らなかった物が突拍子も無く降って来たような気がして、嬉しいというより呆気にとられてしまった。
当然これは完全な「マイコーのアルバム」ではない。選曲や曲順、ジャケット、曲のアレンジなどは、彼に近い人が決めた物で、マイコーが傍に居たらきっと違う風になっていただろう。
マイコーの遺志に沿わないリリースとして反対する意見も多数あった。
しかし私に取っては、不完全であっても間違いなく彼の新しい歌が聴ける大切なアルバムで、リリースされたことは凄く幸運に思う。
個人的な話はここまでにします。
収録曲は10曲で、前の作品群と比べて少なく思えるけれど、どの曲も素晴らしく、物足りなさを感じません。
どの曲も覚えやすくてシンプルなんだけど、少しずつ音や歌い方が変化して、丁寧に作り込まれた味わい深い作品です。
ただ、かっこ良くまとめられ過ぎている所に、マイコー不在で完成されてしまったことが表れていると感じます。マイコーの作品って、「ちょっとしつこい!」「音凝り過ぎ!(笑」「歌詞露骨すぎ」といった、過度な濃密感があって、ヲタ受けする部分があると思うんです。
「新しいアルバムはoff the wallみたいな、単純に音楽を楽しめる作品にしたい」と、共同制作していたwill.I.amが言っていたので、この感じがマイコーの本意だったのかもしれないけど、ちょっと気になる点です。
また、彼の新しいテーマかもしれないと思ったのは、「芸能業界への批判」
今まで、メディアに対する批判を込めた歌は、Thriller以降の全ての作品にあって、お決まりのようだったけれど、このアルバムの"Hollywood Tonight"は、メディアというより、彼の生きていたショービジネスの仕組みそのものに対する批判を歌っている気がする。
以前にはあまりそのような曲はなくて、敢えて言うなら非公式だけどElizabeth I love youぐらいかな?
芸能界は素晴らしく見えるけど実際はパパラッチに追い回されて商品のように扱われて最悪だぜ…という歌詞、マイコーの本音なんだろうけど、ある程度そういう世界になってしまうのは仕方ないし、マイコーは芸能界に入ったことを後悔してるのかな?芸能界にどうなって欲しいのかな?とか、真意を探りたくなるところです。
最後に、私に取ってとても良かったところは、曲のテーマが等身大であること。
we are the worldとか、壮大なメッセージをいくつも届けてくれた過去の作品もかけがえの無い存在だけど、今の私にとってはちょっと重いのです。
何にでもなれると思っていた中学生、高校生を経て、将来が固定されて見えて来た大学生になって、自分が出来る事の程度が分かって来て、しかも生き甲斐で神様のように思っていたマイコーが居なくなって疲弊した私に、「世界を変えよう!」と言われても、「そんな事私にはできないよ〜ごめんね……」って思ってしまいます。だから、「手を握って」とか「頭を上げて」などのシンプルなメッセージがとても嬉しく、聞きやすかったです。

Hold My Hand

マイコーの優しい声と、エイコンの透き通った声がすばらしくリンクした、聞いていて優しい気持ちになれる曲です。
シンプルで流れるように美しいメロディーをベースにして、今風でセンスの光るアレンジもなされているバランスがとても心地よいです。
歌詞は、恋人に呼びかけるような感じにも、恋人に限らず身近な人との繋がりを大切にしようというメッセージにも解釈出来ます。
マイコーは現代人(とくに子供達)について「欲しい物は沢山手に入るけど、心は寂しさでいっぱい」と言及し、心配していました。
内面が冷えがちな現代の私たちに、そっと暖かい灯火をつけてくれるような一曲です。

Hollywood Tonight

最初に聞いたときは、マイコーのボイスパッカーションが全面に押し出されている所が気に入ったものの、曲自体はあまりピンと来ませんでした。
でも繰り返し聞いていくと、そんな事は全く気にならなくなって、"she's going hollywood♪"のフレーズが頭から離れず、何回でも聞けることに自分でもびっくり。
マイコーのワンフレーズに費やす偉大な努力の賜物ですね。
女優を目指して長距離バスに乗り込む家出少女の強い意志や、不安定さまで想像出来る、ストーリー性に溢れる構成も素敵です。
ただ、ブックレットに載っている歌詞が一部大幅に間違えています。
"because she's only fifteen"ではなく、"She's headed for the big time that means"です。
この曲は音作りもおもしろいですね!決してたくさんの音がある訳ではないのですが、さっきも書いたマイケルのボイスパッカーションとアドリブの声、ギターの音、バイオリン(らしき楽器)の音、口笛など、全ての要素が引き立っててクールで、飽きが来ないです。

(I Like)The Way You Love Me

ファンにはお馴染みの可愛い乙女チックな曲が、どこか未来的な雰囲気も漂わせた新しいアレンジで再びお目見えです。
マイコーがこんなにこの曲に拘っているとは思いませんでした。Ultimate Collectionのバージョンを聞いたときは、「良い曲だけど、古めかしい感じがして、途中でちょっと飽きちゃう」という印象だったのですが、今度のバージョンは違います。
コーラスの音が、念入りに加工されてて、なんとも不思議な気持ちいい世界に誘ってくれます。
これがレトロでまったりしたメインのメロディーと組み合わさって凄く良い感じ。
最初のマイコーの声で「drum,ちゅくちゅくちゅく…」っていう部分があったけど、どんな音をイメージしてたのかな?それも聞いてみたいですね。

Best of Joy

Liberian GIrlやFor all timeのような、永遠の愛をテーマにした曲。
うっとりするように甘いかと思いきや、爽やかさもある所が良いですね。
どのパートの歌声も柔らかい感じで凄く良いですが、特に高音の裏声になる所が好きです。
wasn't it I..やyou are the sun...の辺りです。
butterfliesを聞いたときも、マイコーが出す高音の美しさに感動したのですが、さらに深みがましているような気がします。

Can't Make It Another Day

このアルバムで唯一、マイコーの激しいがなり声が聞ける曲。We've Had Enoughの最後のような、魂の叫びって感じの歌い方が大好きなので、「やっときた!」と思いました。
エレキギターのバリバリロックな音と、機械的な音が組み合わさってるし、 寂しげで静かな歌声からいきなり憤りが伝わってくる激しい歌声に切り替わるし、なんだか不思議な曲ですね~。
キャッチーではないと思いますが、私は好きです。(笑
ただ、歌詞がどこにでもありそうな失恋の詩なので、もっとエグいメッセージが欲しかったですね。そしたら超お気に入りソングになってたかもしれません。

Behind The Mask

世界で認められた日本のバンド、YMOの坂本龍一さんが作曲し、スリラーに収録予定だったけれど、著作権の関係で論争になり、結局没になってしまった曲。
テクノ調の音が新鮮で、しかもマイコーに合ってる!もしスリラーに収録されていたら、凄く面白いことになっていただろうな…と、想像がふくらみます。
この曲は聞き慣れた構成と違って、どれがサビなのか分からず、とまどいましたが今は全部サビ と思って聞く事で落ち着いています。(笑
ヴォーカルはスリラー期のマイコーの声ですが、突き抜けるように高くて透き通ってて、跳ねるような元気さがありますね。
YMOのイメージとはちょっと異なった表現に思えますが、不思議に化学反応して、前から流通していたオリジナルの「Behind The Mask」とは違う新しい作品ができています。
ライブ音源が組み込まれてる所はちょっと余計かな~~

Much Too Soon

穏やかな曲調なのに実はとっても悲しい歌。
特に「if only I knew one thing to bring tomorrow, she'd be sitting here beside me and my heart would ... 」の所が切なさマックス。 ...の歌詞については色んな説があり、なんて言ってるか分からない。